2014年12月02日

培養作業の話C-解凍−

こんにちは、培養士Bです。



細胞の種類によって、細かな培養作業は異なりますが、おおまかな作業は決まっています。
細胞が増えたら、回収・継代・保存という作業のいずれかを行います。
新しく培養を始める場合、保存した細胞を解凍するという方法もあります。



今日はこの”解凍”という作業についてお話したい思います。
解凍とは-80℃フリーザーや液体窒素などから細胞を取り出して融解し、新しく培養を始める作業のことをいいます。



解凍と聞くと食物のようにレンジでチンしたり、室温において自然解凍するような過程を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。



繊細な細胞の解凍では上記のような方法は行いません。
仮に上記の様な方法で解凍した場合には、細胞は全て死滅してしまうでしょう。


学生時代に、細胞の保存・解凍は子供を寝かしつけ、起こす時と同じ様な感覚だと教わりました。
細胞を寝かす(保存)ときは、子守歌で子供を寝かしつけるように、ゆっくりゆっくりダメージがないように保存温度を下げていき、
細胞を起こす(解凍)時は、子供を叩き起こすようにすばやく解凍しなさい。



世のお子様がどういった方法で、寝かしつけ、起こされているかはわかりませんが、細胞の解凍で大切なのはスピードだということを伝えたかったのだと思います。



では、なぜ細胞の解凍を早くしないといけないか、というと・・・


・再凍結により細胞が傷ついてしまう
ゆっくり解凍すると0度付近に近づいた際、少しの刺激で再凍結してしまいます。
この氷の結晶は膨張し、鋭敏な結晶となるため細胞膜を傷つけてしまうのです。



・細胞保存液に使うDMSOが細胞に毒性を与える

DMSOは凍結保護剤として使用されますが、常温に戻ると熱を発し、細胞が死んでしまう場合があります。
DMSOを使用し細胞を保存することは一般的な方法ですが、細胞の種類によってはDMSOを使うと死滅してしまうので、使わない方法で保存する場合もあります。



↓DMSO








私は培養工程の中で、この”解凍”に一番神経を使います。
急いで細胞を起こせばいいというわけではなく、少しのダメージで細胞が起きなかったり、増殖が悪くなってしまう可能性も出てくるからです。



皆様の細胞は、ダメージを最小限に抑えるよう、上記のように迅速かつ丁寧に起こしておりますので、どうぞご安心ください.


facilities12



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posted by JYC STAFFS at 12:55| 東京 ☀| Comment(0) | 細胞のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月14日

赤と青を混ぜると・・・?−細胞融合のはなし−

こんにちは、培養士Bです。



”なんにもないぶろぐ”をお手本に、最近断捨離を始めました。
書棚を整理していると学生時代のノートを見つけ、ページをめくる度に懐かしい記憶が蘇ります。
今日はそのノートに記されていた
 ”マウスのミエローマ細胞と赤血球の細胞融合−ヘモグロビン検出およびエリスロシン染色−”のお話です。



タイトルを聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、
簡単に言うと、がん細胞と赤血球を合体して染色してみました。という内容です。
一般的には、モノクローナル抗体作製に細胞融合という手法を使います。
抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体といった種類があり、動物に抗原を打って産生させた抗体はポリクローナル抗体に含まれます。



この2種類の抗体の何が違うかというと、
モノクローナル抗体は単一の抗原決定基を、
ポリクローナル抗体は複数の抗原決定基を持っています。
そのため、ポリクローナル抗体では広範な抗原抗体反応を示し、過剰免疫抑制による感染症、PTLD(移植後リンパ増殖性疾患)などのリスクが増大するというデメリットがあります。



モノクローナル抗体は特異性が高く、悪性腫瘍など目的の組織や細胞に対して,薬物を選択的に到達させるミサイル療法にも利用されています。


そんな素晴らしいモノクローナル抗体ですが、抗体を生み出す細胞には寿命や増殖の限界があり、産生される抗体にも限りがあります。
そこで、無限に増えるがん細胞と抗体を生み出す細胞を合体して、生産効率を増大させる為に細胞融合という手法が使われているのです。
融合した細胞はハイブリドーマといいます。



私が行った実験では赤血球とがん細胞の細胞融合実験でしたが、融合後の細胞観察が楽しかったので今でも鮮明に記憶しています。
エリスロシン染色とヘモグロビン検出を行うのですが、この説明をすると長くなってしまいますので、染色するとどうなるかというお話だけにとどめておきます。



エリスロシン染色は細胞の生死判定に使われ、細胞が死ぬと赤色に染まります。細胞が生きていれば無色透明です。
ヘモグロビン検出は赤血球に反応して青く染まります。


ミエローマ細胞(生)=無色透明
ミエローマ細胞(死)=赤
赤血球=青
ミエローマ細胞と赤血球の融合細胞(生)=青


といった具合です。
では、ここで問題です。


ミエローマ細胞と赤血球の融合細胞(死)=
一体何色になるでしょうか?
・・・簡単ですね(^_^)



A1311530183.jpg






posted by JYC STAFFS at 18:54| 東京 ☀| Comment(0) | 細胞のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月28日

培養作業の話B−凍結保存−

こんにちは、培養士Bです。



今日は培養作業の凍結保存についてお話したいと思います。
凍結保存とは−80℃のディープフリーザーや、−196℃の液体窒素の中で細胞を眠らせることをさします。
−196℃の液体窒素の中で細胞は半永久的に眠ることができます。



凍結保存の仕方としては、細胞を回収し保存試薬で保存するか、DMSOと基礎培地、血清を使用して保存するなどの方法があります。どちらの方法をとったとしても、緩やかにに温度を下げて凍らせる必要がありますので、それを可能にする機器や物品などが必要になってきます。



緩やかに温度を下げる理由としては、”氷の結晶”が関係しています。
急速冷凍してしまうと細胞外の水が、細かく鋭利な結晶を作ってしまい細胞膜を傷つけてしまいます。
ゆっくり凍結すると大きな結晶ができるため、細胞膜を傷つけるリスクを減少させることができるのです。



とはいっても、すべての結晶が大きくなるとはかぎりません。
少なからず鋭利な結晶もできてしまうので、多かれ少なかれ細胞は傷つけられてしまいます。
保存した細胞は必要な時に解凍して使用しますが、解凍によっても細胞はダメージをうけてしまいます。



では、なぜこの保存という作業が必要になるのでしょうか?
細胞を傷つけないためにも保存は行わず、継代を繰り返した方が細胞にとっていいのではないか?と思ってしまいそうですね。



しかし、継代をしつづけることで生じる様々なデメリットがあります。

・形質転換
形質転換とは正常な動物細胞が無制限に分裂を行うようになったり、、その細胞が有していなかった性質が現れたり、逆に本来もっていた性質がなくなったりすることをさします。


このような細胞を治療に使ってしまうと、本来コラーゲンを生成するはずだった細胞がコラーゲンを生成しなかったり、ただただ増殖し、しこりをもたらしたりと治療の効果や意味自体がなくなってしまいます。
当クリニックに限らず、研究などに使われる細胞もころころと性質がかわってしまっては正確なデータがとれませんので、保存、解凍という手法は必ず行う必要があるのです。



・コスト
細胞を増やすための部屋やインキュベーターの数にも限りがありますし、培養に使用する試薬、物品のコストが大幅にかさんでしまいます。
数百人もの細胞を抱えているクリニックやラボで、毎日数百もの細胞のお世話をし続けることは、難しいでしょうし、非常に効率が悪いです。

また、不必要に複数の細胞を培養し続けることは、細胞同士のコンタミネーションをまねくリスクまでも上げてしまいます。


・治療効果
継代し続けるということはその分細胞が分裂し続けるということです。
分裂し続けるということは細胞が老化していくということになります。
老化した細胞を治療に使っても、効果はありません。
これでは、老化が緩やかな、耳の裏から皮膚を採取する意味がなくなってしまいます。

細胞にとって、そして患者様にとってベストな状態にしていく為に欠かせないのが”保存”になるのです。


保存の必要性と重要性をご理解いただけましたでしょうか。
次回は解凍についてお話したいと思います。





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posted by JYC STAFFS at 15:31| 東京 ☁| Comment(0) | 細胞のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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