2014年09月05日

100℃で加熱しても死なない!? 菌の恐怖と恩恵

こんにちは、培養士Bです。



梅雨から夏にかけて食中毒が多い時期といわれています。
厚生労働省に報告があった食中毒事例(2014年9月2日まで)では、
冬(1、2月):約4500人
春(3、4、5月):約3500人
夏(6、7、8月):約750人

と意外なことに夏場が少ないように見えます。



”報告があった”食中毒事例ですので、報告漏れや家庭での食中毒などカウントされてない可能性もあります。
また、暖房設備の発達により細菌が増殖しやすい環境が増えたため、冬でも食中毒が多く見受けられるようです。
いずれにしても、オールシーズンで食中毒に気をつけた方が良いということになりそうです。



今年の食中毒者は約9700人(2014年9月2日の段階)
そのうち、ウィルスによる食中毒者が約6700人、細菌による食中毒者が約2300人にものぼっています。



幸い死亡者は出ていないようですが、ボツリヌス菌の食中毒は致死率30%とも言われていますし、十分注意が必要です。


家庭でできる消毒・殺菌で思い浮かべるのが、煮沸消毒や消毒薬を使った薬品消毒などがあると思います。
小さなお子様のいるご家庭ですと薬品に対して抵抗が強いと思いますので、煮沸消毒を選択する場合が多いかもしれません。



しかし、100℃で加熱しても死滅しないウエルシュ菌という困った細菌も存在します。
このウエルシュ菌はクロストリジウム属に属する嫌気性桿菌です。


↓ウエルシュ菌







ウエルシュ菌による食中毒は、カレーや煮物などまとめて作って長時間保管する食品でよく起こります。
一度加熱して、菌自体は死んでも芽胞という細胞構造を残します。
芽胞は非常に耐久性が強く、100℃で6時間熱し続けても壊れないものまでいるのだとか。



芽胞は室温にもどり、生育しやすい環境になると発芽し再び増殖を始めます。
その為、作りおきの料理で多く発生するのです。



”100℃で熱しても死滅しないなんて、恐ろしい!!”と思う方もいるかもしれません。
しかし、こういった熱に強い菌のおかげでバイオテクノロジーが発展したという一面もあります。



それが、PCRです。ポリメラーゼ連鎖反応の略で、遺伝子を増幅させる手法です。
DNA鑑定という言葉を耳にしたことがあると思います。
このDNA鑑定はPCRの手法を利用しています。



PCRという手法はキャリー・バンクス・マリス博士によって発明されました。
マリス博士が彼女のジェニファーを乗せてのドライブ中、PCRのアイデアが彼の頭の中で突然浮かびました。この閃きに自分でも驚き車を路肩に寄せて、手元にある紙片に化学式を書き留めたそうです。



それまで、主な遺伝子を増幅する方法として大腸菌を使用していました。
大腸菌の中に解析したいDNAを組み込み、大腸菌を一生懸命増やしてDNAの量を増すという大変手間のかかる作業です。
大腸菌の増殖にも時間がかかりますので数日を要します。

PCRですと半日もかかりませんので、いかに画期的かがおわかりいただけると思います。


PCRでは、まず2重らせん構造をもった遺伝子を約90℃以上の高温で1本鎖にわけます。
1本鎖に分けた後増やしたい遺伝子部分をDNA合成酵素を使って増やしていくのですが、PCR発明以前では遺伝子を2本鎖から1本鎖に分ける段階で、高温による酵素失活がおこってしまいました。


そこで、マリス博士は高熱性の細菌から得たDNA合成酵素をつくり、PCRに革命を起こしたのです。


細菌に限らず、酵母は発酵食品を作るのにかかせませんし、カビは最初の抗生物質として知られるペニシリンを分泌しました。
ウィルスにガンを退治させるウィルス療法という研究も進んでいるそうです。



菌の恩恵のに感謝しつつ、食中毒には十分留意し残りわずかな夏も乗り切っていきましょう。

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posted by JYC STAFFS at 10:00| 東京 ☁| Comment(0) | クリニックスタッフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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