2014年10月28日

培養作業の話B−凍結保存−

こんにちは、培養士Bです。



今日は培養作業の凍結保存についてお話したいと思います。
凍結保存とは−80℃のディープフリーザーや、−196℃の液体窒素の中で細胞を眠らせることをさします。
−196℃の液体窒素の中で細胞は半永久的に眠ることができます。



凍結保存の仕方としては、細胞を回収し保存試薬で保存するか、DMSOと基礎培地、血清を使用して保存するなどの方法があります。どちらの方法をとったとしても、緩やかにに温度を下げて凍らせる必要がありますので、それを可能にする機器や物品などが必要になってきます。



緩やかに温度を下げる理由としては、”氷の結晶”が関係しています。
急速冷凍してしまうと細胞外の水が、細かく鋭利な結晶を作ってしまい細胞膜を傷つけてしまいます。
ゆっくり凍結すると大きな結晶ができるため、細胞膜を傷つけるリスクを減少させることができるのです。



とはいっても、すべての結晶が大きくなるとはかぎりません。
少なからず鋭利な結晶もできてしまうので、多かれ少なかれ細胞は傷つけられてしまいます。
保存した細胞は必要な時に解凍して使用しますが、解凍によっても細胞はダメージをうけてしまいます。



では、なぜこの保存という作業が必要になるのでしょうか?
細胞を傷つけないためにも保存は行わず、継代を繰り返した方が細胞にとっていいのではないか?と思ってしまいそうですね。



しかし、継代をしつづけることで生じる様々なデメリットがあります。

・形質転換
形質転換とは正常な動物細胞が無制限に分裂を行うようになったり、、その細胞が有していなかった性質が現れたり、逆に本来もっていた性質がなくなったりすることをさします。


このような細胞を治療に使ってしまうと、本来コラーゲンを生成するはずだった細胞がコラーゲンを生成しなかったり、ただただ増殖し、しこりをもたらしたりと治療の効果や意味自体がなくなってしまいます。
当クリニックに限らず、研究などに使われる細胞もころころと性質がかわってしまっては正確なデータがとれませんので、保存、解凍という手法は必ず行う必要があるのです。



・コスト
細胞を増やすための部屋やインキュベーターの数にも限りがありますし、培養に使用する試薬、物品のコストが大幅にかさんでしまいます。
数百人もの細胞を抱えているクリニックやラボで、毎日数百もの細胞のお世話をし続けることは、難しいでしょうし、非常に効率が悪いです。

また、不必要に複数の細胞を培養し続けることは、細胞同士のコンタミネーションをまねくリスクまでも上げてしまいます。


・治療効果
継代し続けるということはその分細胞が分裂し続けるということです。
分裂し続けるということは細胞が老化していくということになります。
老化した細胞を治療に使っても、効果はありません。
これでは、老化が緩やかな、耳の裏から皮膚を採取する意味がなくなってしまいます。

細胞にとって、そして患者様にとってベストな状態にしていく為に欠かせないのが”保存”になるのです。


保存の必要性と重要性をご理解いただけましたでしょうか。
次回は解凍についてお話したいと思います。





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posted by JYC STAFFS at 15:31| 東京 ☁| Comment(0) | 細胞のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月22日

培養作業の話A−継代−

こんにちは、培養士Bです。



今日は培養操作の”継代”についてのお話です。
皆さまには、この”継代”という言葉は耳慣れないのではないかと思います。



培養器具・フラスコ一杯に増えた細胞を新しいに培地に移し、次代として培養していくことを指します。

このような感じです↓


培養し始め(細胞数が少なく、まばらです)
T-25_5H.jpg


細胞がフラスコ一面に増えました
T-25_94H.jpg


継代してまた培養します
(広い空間で細胞は更に増殖することが出来ます)
T-25_5H.jpg



では、なぜこの”継代”という作業が必要なのでしょうか?
同じ培養器具・フラスコで増え続けられたらとても良いのですが、そうもいきません。



正常な細胞では増殖し、細胞同士が近づきすぎると移動や増殖が停止する”接触阻害”が起きるからです。
やっかいな機構だと思うかもしれませんが、この接触阻害により一定の組織を形成していると考えられています。




この接触阻害が起こらない細胞がいます。
それが”がん細胞”です。
無限に増殖し続け、腫瘍を作ったり、転移したりします。
私たちの身体や臓器が、がん細胞のように増殖し続け、永遠に成長し続けてしまっては困りますよね。
このことからも、接触阻害が重要な機構であることがお分かりいただけるかと思います。



継代は、新しい培養液に細胞を一部移す作業です。
この一文を読んだだけですと非常に簡単な作業に感じられるかもしれませんが、

・培養期間
・培養液の量
・継代時期

など、複合的に考えて、次に植え継ぐ細胞数を決定していきます。
細胞によっては薄く捲きすぎると増殖が悪くなる場合や、順調に増殖していく場合もあります。
細かなスケジューリングをし、細胞を、注入日にあわせてベストな状態にもっていくのです。



”この程度の数で細胞を捲いたら、○日で細胞が一杯になるだろう”という大まかな予測をたて細胞を育てていく為、細胞の状態、キャラクターをしっかりと理解しなければ、予測通りに行きません。
その為、豊富な培養経験が必要になってくるのです。



今日は”継代”についての記事でした。
次回は細胞の保存についてのお話を予定いたしております。


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posted by JYC STAFFS at 15:43| 東京 ☀| Comment(0) | 細胞のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月19日

本当だったらいいですね−水からの伝言−

こんにちは、培養士Bです。



以前、看護師Aさんから”水からの伝言”という 氷の結晶の話を聞きました。
私はそれらについて何も知らなかったのですが、本やテレビなどでも取り上げられているようです。



水に『ありがとう』などの『よい言葉』を見せると、きれいな結晶ができ、
逆に『ばかやろう』などの『わるい言葉』を見せると、形の崩れた結晶ができる、
というのが、水からの伝言のおおまかな内容のようです。



何故この”水からの伝言”の話になったかというと、
この頃看護師Aさんは自身の皮膚を採取し、培養作業が開始されるところでした。
培養液の中で細胞を培養するのなら、細胞にきれいな言葉をかけることでより良い細胞が育つのでは?と冗談半分で提案を受けたからです。



私は疑り深い性格なので、
培養Dish2枚のうち、1枚目に”ありがとう”シールをはり、
2枚目に”ばかやろう”シールをはって培養してみようと提案しました。
しかし、”ばかやろう”Dishの細胞が可哀想という事になり、検証作業はできませんでした。



”水からの伝言”の真偽はわかりません。ネットでは賛否両論色々な意見があるようです。


私は疑り深い性格なので、実験の条件、実験回数、実験に使用した水の組成、実験環境etc...
様々な方法を試みて総合的に判断しないと何ともいえません。
ただ、植物も綺麗な言葉で良く育つといいますし、生きているものであれば可能性としてはゼロではないのかもしれません。


この話が本当で、細胞たちが『良い言葉』で元気に育ってくれたら良いですね。
”ありがとう”シールは張っていませんが、全ての細胞に愛情をもって育てておりますので、ご安心くださいね。



ice-crystals_21-1809.jpg



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posted by JYC STAFFS at 10:00| 東京 ☀| Comment(0) | クリニックスタッフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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